◎ 長崎市新地中華街 つりがね堂薬局の木製プロペラ 撮影2008/05/17
N.P.C
九一式戦闘機一型のプロペラ
店の方に訊ねましたら、「九一式戦闘機のプロペラです」と、なんでもその昔、同薬局より「戦闘機を”寄付”した際のお礼としてもらった」とのことです。で、「レプリカですか?」と疑いましたら、「本物です」
と、きっぱり回答がありました!
そう言われて現物をよく見ると、プロペラ基部に、九一式***プロペラという文字が読めました、後の文面はペイントにてはっきり見えませんでした最後に昭和**の文字がかすかにみえます。ほんとに本物ならば屋内に展示してもらいたいものです。
肉眼では 九一式***プロペラ 昭和10年の文字が読めました
写真を見て 特定非営利活動法人 航空復元懇話会 横川裕一
見事な九一戦のプロペラです。まだ、残っているのですね。素晴らしいものです。
色は、塗り替えられているのでしょう。先端を金属カバーが覆っているところを見ると、被包式ではないそれ以前のプロペラだと思われます。
ただし、航空復元懇話会が所有する同ペラ(下左)とも、先端形状が違います。この形状は複数のバリエーションがあったと認められ、添付の「機種アップ」(下右)に近いです。懇話会で、調査しにいかねばなりません。
なお、長崎県は、九一戦時代には陸軍機を献納していません。後の時代か、太刀洗からの関係で贈呈されたものと想像されます。
九一式戦闘機一型のプロペラについて 佐伯邦昭
九一戦一型のプロペラは、
初の国産機開発とあってプロペラ効率を高めるピッチの追求と同時に小石や氷から木材部分を守るために苦労した様子がうかがわれます。外部形状は次のような変遷がある
そうです。
航空復元懇話会発行「九一式戦闘機について 中間報告その2」から
@ 純木製
A 先端と前縁にチッピングと呼ばれる金属カバーをつけたもの
B-1 被包式 全体に細い黄銅の網を被せて塗料を塗り、先端と前縁にA形式のチッピングをつけたもの
B-2 被包式 B-1で強度が増したためのチッピングを前縁だけにしたもの
C 金属製の試作
よって、つりがね堂のプロペラは、横川さんの鑑定のように被包式になる前のAの形状のものと思われます。
日替わりメモ455番 2008/05/25から
○ つりがね堂薬局の九一式戦闘機のプロペラ
大きな梵鐘がトレードマークの薬局で、その軒下に太い木のプロペラが第二トレードマークみたいにつるしてあり、(ちょっと安珍清姫を連想させます) その場所が中華街の南大門の前であり、しかも献納機の謝礼として貰ったものであるという、さまざまな文化を受け容れてきた長崎らしい混沌(こんとん、カオス、餛飩という唐菓子もある)を感じさせます。見ていて愉快です。
その木製プロペラですが、店主の言葉どおり九一式戦闘機のプロペラであることを、所沢の九一戦を復元している横川さんにも確認して貰いました。九一戦のプロペラは試行錯誤による多くの変遷があり、最終的にはハミルトンスタンダード様式を取り入れた金属製に落ち着きます。
つりがね堂薬局のプロペラは、その初期のもののようです。軒下で直射日光や風雨や排気ガスに耐えて歴史を語っております。長崎観光の折には是非対面して、ご苦労さまと声を掛けてやりましょう。
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