三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所史料室の零戦
三菱4708のエンジンは、状況証拠にすぎませんが、栄エンジンであると思います。同機復元中に、三菱重工担当の方より、栄エンジンの塗色の調査を依頼され、ANAの元海軍整備兵の方たちに聞いた結果を連絡したことがあります。その折の話では、排気管はステンレス製なので使用できるが、軽合金製部品、シリンダーなどは腐食のため、一部は作り直さなければいけないだろうとのことでした。
自衛隊のP&W
R2800, Wright R3350などをオーバーホールしていた大幸工場は、無くなっていたので、復元は、小牧北工場(誘導推進システム製作所)で行われていたようです。大幸では、自衛隊エンジンのシリンダーを製造していたので、本格的な復元は技術的に問題なかったと思われます。いずれにせよ、三菱重工は、自社の誇りである零戦を、別エンジンを持ってきて適当に仕上げるような会社ではないと思います。
エンジンカウルの件、私も同機を見ていますが、一目でこれは52型用とは違うなと感じました。2機分の残骸から1機に仕上げたと聞きましたが、カウルが復元可能な状態でなかったので製造したようです。三菱重工は、秋水の復元時、図面の無い部位は手を加えなかったというように、厳密な復元を行っています。膨大な量の図面も保有しており、製造にあたってはこれらを使用しているはずです。
私は、もしかすると、金星エンジン機(64型)のカウル図面を使用したのかなと思っていましたが、近年発見された同型機のそれとも違うので、謎のままです。
私は、ANAのRRダートエンジン技術担当だったので、オーバーホールを依頼していた三菱重工技術者とは長年仕事を共にしていました。復元当時は別のエンジン担当だったので直接関係はなかったのですが、私が航空マニアであることを知っていたので相談してきたものです。図面の件は、羽田でハ50エンジンが発掘されたとき、三菱重工に問い合わせしたところ、すぐ同エンジンの外形図を提供してくれたいきさつがあります。また、海外の零戦復元に、図面提供の協力を行っているそうです。