例によってヒコーキ雲掲載の写真と記事、その他web検索の範囲からという物証の無い考察ですが。
1 .空力
他のフロート付セスナ206の写真をあたる限り、二式水戦等と同様に方向安定維持のため尾部下面にフィンを追加しています。ところが宮崎の正体不明機は下駄履きにもかかわらず、腹ビレが付いていません。
2 サブタイプとドア配置
胴体左側のドア配置は宮崎の機体もJA3552も同一に見えます。右側前席も同じようです。JA3552では後部右側はドア無し、宮崎の機体にはパネルラインかとも思える線があるように見え、これがドアだとすると型式違いの可能性が出てきますが、ドアヒンジや開閉レバーらしいものが見当たらず、宮崎の機体もドア無しではないかと考えます。
JA登録資料などを参照する限り
JA3552は型式変更の履歴が無く、国内初登録時から「セスナP206Eロバートソン」らしいので、STOL改造後に輸入されたと考えられます。
前席ドア後部の「Robertson STOL」ワッペンは3552にも胴体両側にそれらしいものが見えます。
3 .機体改造の痕跡
JA3552は南紀航空が航測会社のために運航していた機体でキャビン床面に垂直撮影用のカメラ穴があります。カメラドアのレールが見えています。(主脚付近から後方キャビン下面にある薄い角ばった出っ張り)
宮崎の機体にも同じくカメラドアと思しき出っ張りが付いていますが、わざわざ水上機にカメラ窓を開ける理由を思いつきません。(開けるのは持ち主の自由ですが、飛ばすためには修理改造検査に合格して耐空証明の交付を受ける必要があります。)
国内の使用事業会社(や航測会社)所属のセスナ206には同様に垂直撮影用のカメラ搭載改造(穴あけ)をされている機体が複数ありますが、皆陸上機でかつSTOL改造の機体は館長がお調べのようにごく僅かです。
また、宮崎の機体は登録記号番号を塗り消したような痕跡が写真から判読できず、プロペラも両面赤というのは実動機ではあまりやるとも思えず、まるヨさんの投稿に「塗り直し」とあるのは(右側の「Robertson
STOL」のワッペンを残して)全面再塗装している事を指すのではないかと考えます。
即ち、宮崎の不明機はその意図は不明ながら「別々に入手した(?)カメラ穴のある陸上型セスナ206ロバートソンとフロートを組み合わせて全面再塗装の上で展示している」と推測します。
フロート自体はセスナ206用としても大きさ、形状や取付位置等には不自然さを感じませんので、少なくとも同クラスの機体向けのものであろうと思います。
一つ解らないのは宮崎の機体のエンジンカウリング右側面に並ぶ縦線です。スリットにも見えますが、JA3225や他の206の写真ではそんなものは無さそうです。実際には何なのか私には不明ですが、時系列としては後加工で矛盾しないので、宮崎の機体はJA3552の可能性が高いと私は思います。
(イベント等で)水に浮かべるだけなら飛べなくても陸送して展示できる訳ですし、いずれ耐空証明の交付を受けるにしても(カメラ穴をそのままにしておく分にはすでにOKが出ているので)水上機化に関する変更部分についての修理改造検査という事になろうかと思います。
手を入れていつか飛ばすつもりなのか、もとから展示機にするつもりだったのか判りませんが、STOLワッペンを残しているらしいあたりを見ると或いはオーナーは飛行機に何らかの思い入れがあるのかもしれません。
4 .そのほか気になること
浮舟の形状も水上型(水陸両用型)206の画像検索で多く見られるものと少し異なるようです。ちょっと太くて短い?角ばっている??水中舵の取付部や形状も最も売れたらしい型のものとは異なりますが、複数社から水上機化キットが出ていてもおかしくないのと、私にはこの方面の知識がないのでこれはいったん置くことにします。
北一のFacebookにある河川敷での写真ですが、やはり腹ビレは無く、機体に登録記号番号も記入されていません。普通は新造機なら登録予定の、飛ばせる状態の中古機なら以前の登録記号番号が書かれているものと思います。また、この撮影の前後にどうやって滑走水面との間を移動したのかも疑問です。
この写真がどのような状況なのか判りませんが、少なくともこの時点では(機械的には生きていても)飛行できない状態であったと思います。平成2年4月購入ということならJA3552の抹消登録直後でもあります。
相変わらず推測だけで決定的証拠の無いハナシですが、いかがでしょうか。