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質問箱009 掲載14/01/25
解決18/05/22

 宮崎市に展示されている水上機の正体は 

セスナP206Eロバートソン JA3552にほぼ確定

 

A8601-2 宮崎市大田三丁目 北一株式会社駐機場 元宮崎経済新聞社
       Miyazaki Prefecture 
          


質問箱 この機体の型式とJA登録記号を教えてください

◎ 北一株式会社駐機場 元宮崎経済新聞社のセスナ水上機

2014年

撮影2014/01/15 KUPANBA

 新たに北一株式会社駐機場と掲示されています。北一株式会社のホームページによると“平成0204月イベント・広告用に水上飛行機購入(6人乗り)”となっています。同社のFacebook に大淀川河口と思われる写真がありました。宮崎経済新聞社のホームページにあった写真と同じだと思われます。壁にかかっている写真パネルを写したもののようです。

 おそらく購入当初のものではないでしょうか。レジナンバーやロゴ等も見られません。まるヨさんのコメントにある“塗り替えられていて「宮崎経済新聞社」と機体サイドに書かれています”とは最初は何のロゴもなかったが後から「宮崎経済新聞社」と書き入れられたという意味でしょう。

 2010年ごろには産経宮崎は消滅したみたいで同社のFacebookの更新も止まっています。そのため現在のようにロゴも塗りつぶされたのではないでしょうか (2014/01/25記 KUPANBA)


2012年

撮影2012/12/01 MAVERIC (基本的な塗装は2002年以降代っていない)


2010年    

 社名が産経宮崎に変わっているほか変化はありません。セスナ206系ではないでしょうか。

撮影2010/09/05 MAVERIC 左側の文字は産経宮崎


右側胴体 ROBERTSON社のストールキットのマーク
 


2002年

 旧国道220号線の宮崎空港入口交差点の脇にあります。塗り替えられていて「宮崎経済新聞社」と機体サイドに書かれています。たぶんセスナ185だろうと思います。

撮影2002/7/14  まるヨ

手掛かり ROBERTSON STOLキットで改造した機体一覧 (他にもあればお知らせください)

@ セスナP206Eロバートソン JA3552

1970/10/31 c/nP20606640 JA3552登録 南紀航空 定置場南紀白浜空港
1990/03/19 抹消登録
  下郷資料に「900310用途廃止、展示」と記載 展示場所は不明
1990/04 宮崎市北一株式会社がイベント・広告用に6人乗り水上機購入 この機体の公算が大

A セスナTU206Eロバートソン JA3590

1971/07/20 c/nU20601649 JA3590登録 東洋航空事業 定置場仙台空港
1977/07/31 台風により大破
1977/09/01 廃棄処分
1990/03/19 抹消登録

B セスナTU206Eロバートソン JA3597

1971/08/24 c/nU20601656 JA3597登録 東日本航空 定置場仙台空港
1982/05/10 日本ファライングサービス 定置場仙台空港
1991/07/03 ユアサ 定置場仙台空港
1993/02/12 村瀬光彦 定置場仙台空港
2011/03/11 東日本大震災により破壊
2011/06/06 抹消登録

C セスナ172Lロバートソン JA3602

D セスナ207ロバートソン JA3610

E パイパーPA32ロバートソン JA3643

 機体に明瞭に書かれているROBERTSON STOLの文字からして、ロバートソン社によるSTOL(短距離離着陸)改造機であることは確か と思われます。その前提で日本における小型機のロバートソン社改造機をリストアップすると上記のとおりです。この中からC、D、Eは機体形状が写真とは異なりますので除外されます。

 仙台で破壊されたAとBも明らかに除外されます。残るは@です。

 南紀航空所有であれば、双フロートの水上機タイプでも異論はありまセんし、宮崎市の大淀川河口で何かのイベントで飛んでいたということも十分に考えられます。 そんな関係から宮崎経済新聞社が引き取って展示したということが十分に考えられます。

 ただ、同機の南紀航空現役時の写真には、車輪付きのものはあっても、フロート付きのものが無く、塗装も全く異なりますが、下郷資料に展示とあるのは気になります。
南紀航空 玉野測量設計  撮影1981/08/24 名古屋空港 MAVERIC 

南紀航空 撮影1974/10/20 八尾空港 KUPANBA
 

南紀航空 撮影1986/11 八尾空港 MAVERIC
   

 

2014/01/31 試論 JA3552かもしれない   はねぶた

 例によってヒコーキ雲掲載の写真と記事、その他web検索の範囲からという物証の無い考察ですが。

1 .空力

 他のフロート付セスナ206の写真をあたる限り、二式水戦等と同様に方向安定維持のため尾部下面にフィンを追加しています。ところが宮崎の正体不明機は下駄履きにもかかわらず、腹ビレが付いていません。

 2 サブタイプとドア配置

 胴体左側のドア配置は宮崎の機体もJA3552も同一に見えます。右側前席も同じようです。JA3552では後部右側はドア無し、宮崎の機体にはパネルラインかとも思える線があるように見え、これがドアだとすると型式違いの可能性が出てきますが、ドアヒンジや開閉レバーらしいものが見当たらず、宮崎の機体もドア無しではないかと考えます。

 JA登録資料などを参照する限り JA3552は型式変更の履歴が無く、国内初登録時から「セスナP206Eロバートソン」らしいので、STOL改造後に輸入されたと考えられます。

 前席ドア後部の「Robertson STOL」ワッペンは3552にも胴体両側にそれらしいものが見えます。

 3 .機体改造の痕跡

 JA3552は南紀航空が航測会社のために運航していた機体でキャビン床面に垂直撮影用のカメラ穴があります。カメラドアのレールが見えています。(主脚付近から後方キャビン下面にある薄い角ばった出っ張り)

 宮崎の機体にも同じくカメラドアと思しき出っ張りが付いていますが、わざわざ水上機にカメラ窓を開ける理由を思いつきません。(開けるのは持ち主の自由ですが、飛ばすためには修理改造検査に合格して耐空証明の交付を受ける必要があります。)

 国内の使用事業会社(や航測会社)所属のセスナ206には同様に垂直撮影用のカメラ搭載改造(穴あけ)をされている機体が複数ありますが、皆陸上機でかつSTOL改造の機体は館長がお調べのようにごく僅かです。

 また、宮崎の機体は登録記号番号を塗り消したような痕跡が写真から判読できず、プロペラも両面赤というのは実動機ではあまりやるとも思えず、まるヨさんの投稿に「塗り直し」とあるのは(右側の「Robertson STOL」のワッペンを残して)全面再塗装している事を指すのではないかと考えます。

 即ち、宮崎の不明機はその意図は不明ながら「別々に入手した(?)カメラ穴のある陸上型セスナ206ロバートソンとフロートを組み合わせて全面再塗装の上で展示している」と推測します。

 フロート自体はセスナ206用としても大きさ、形状や取付位置等には不自然さを感じませんので、少なくとも同クラスの機体向けのものであろうと思います。

 一つ解らないのは宮崎の機体のエンジンカウリング右側面に並ぶ縦線です。スリットにも見えますが、JA3225や他の206の写真ではそんなものは無さそうです。実際には何なのか私には不明ですが、時系列としては後加工で矛盾しないので、宮崎の機体はJA3552の可能性が高いと私は思います。

(イベント等で)水に浮かべるだけなら飛べなくても陸送して展示できる訳ですし、いずれ耐空証明の交付を受けるにしても(カメラ穴をそのままにしておく分にはすでにOKが出ているので)水上機化に関する変更部分についての修理改造検査という事になろうかと思います。

  手を入れていつか飛ばすつもりなのか、もとから展示機にするつもりだったのか判りませんが、STOLワッペンを残しているらしいあたりを見ると或いはオーナーは飛行機に何らかの思い入れがあるのかもしれません。

4 .そのほか気になること

 浮舟の形状も水上型(水陸両用型)206の画像検索で多く見られるものと少し異なるようです。ちょっと太くて短い?角ばっている??水中舵の取付部や形状も最も売れたらしい型のものとは異なりますが、複数社から水上機化キットが出ていてもおかしくないのと、私にはこの方面の知識がないのでこれはいったん置くことにします。

 北一Facebookにある河川敷での写真ですが、やはり腹ビレは無く、機体に登録記号番号も記入されていません。普通は新造機なら登録予定の、飛ばせる状態の中古機なら以前の登録記号番号が書かれているものと思います。また、この撮影の前後にどうやって滑走水面との間を移動したのかも疑問です。

 この写真がどのような状況なのか判りませんが、少なくともこの時点では(機械的には生きていても)飛行できない状態であったと思います。平成24月購入ということならJA3552の抹消登録直後でもあります。

 相変わらず推測だけで決定的証拠の無いハナシですが、いかがでしょうか。

 

2018/05/21 セスナP206ロバートソン JA3552であろう  れある

まずは聞いた話
 1978(昭和53)年の夏に南紀航空の事情に通じた方から聞いた話の要約です。「JA3552は水上機として運用するためにフロートキットと共に輸入されたのだが、航空局へフロートキットの強度を証明することができなかったため、陸上機として新規耐空証明を受け航測機として使用されている。取付けられなかったフロートキットは白浜の格納庫に保管されている」

次に見たもの
 上述の話を聞いた数週間後、白浜空港を訪れる機会があたので、南紀航空の格納庫を覗いてみました。確かに有りました。梱包されたままのフロートキットが。

 SERIAL NUMBER PLATEを確認すれば正体が判明するわけですが、機体が金網の中ではそうもいかないので、更にヒコーキ雲掲載の写真、グーグルのストリートビュー等から正体を探ってみました。

@ ドアの配置からU206ではなくP206です。
A 排気管の出口位置からTP206ではなくP206です。
B 主翼の翼型(断面型)と翼端形状から、ROBERTSON社のSTOL KITを装備しています。

 以上を総合すると型式はセスナP206ロバートソンとなり、もしこれが日本で登録されていた内の1機だとすれば、これはJA3552となります。

 フロートは、機体への取り付け方法からEDO FLOTと思われます。
  http://www.kenmoreairharbor.com/models.html

 モデルは現在の582-3430に相当するものではないでしょうか。
    http://www.kenmoreairharbor.com/uploads/9/6/8/3/9683162/edo_float_model_582- 3430_cessna_206_series_airplanes.pdf

 通常の主脚と前脚を取下ろした跡にポン付け(無加工で取付)できるタイプです。